「う」
 不思議そうに、ユウリは従兄弟の顔を見上げた。
「うま?」
「そうや。馬。乗馬。やってみたいやろ?うん。そうに決まっとる」
 五歳児に向かってにやりと笑ってみせる旧家の天才後継者は、殊の外上機嫌だった。
「ユウリだって、イギリス貴族のご子息さまや。乗馬くらいできんとな」
 いきなりリムジンに乗せられて連れられてきた見たこともない場所にきょとんとしたまま、ユウリは従兄弟の手をしっかりと握っていた。
 とにかく、わけはわからないけど、従兄弟と一緒にいたら大丈夫。
 怖いものから護ってくれるし、暗い夜には暖かい布団の中に入れてくれる。
 従兄弟の言うことに間違いはないのだ。
 たぶん。
「ほら、あれがうちの馬や」
 馬場に係の者が連れてきた馬には、既に鞍もつけられて、いつでも乗れるようになっている。
 しかし、子馬ではない。あくまでも、立派な黒馬だった。
「・・・・・・のるの?」
 間近から五歳児が見る馬は、とにかく大きい。もちろん、見上げても鞍は遙か上だ。
 ユウリは動物が好きだけれど、五歳児が乗るのは、ちょっと怖い。いや、凄く。
 そもそも、従兄弟と馬を比較しても、未だ少年の域を出ない従兄弟にだって、馬は巨大なのではないか。
「・・・・・・ほんとに?」
 小首を傾げるユウリに、従兄弟は大人のように肩を竦めてみせた。
「嫌ならいい。怖いんならな」
「・・・こわい」
 素直なユウリは、素直に自分の気持ちを告げてみた。
「怖いか」
 従兄弟は、しゃがんでユウリの漆黒の大きな瞳を覗き込んだ。
「・・・きれいだけど、こわい」
 手入れされた馬の鬣の美しさや筋肉の張りなど、五歳児にはわからないが、姿が綺麗なことはわかる。
 それでも、自分が乗ると思うと、怖いものは怖いのである。
「怖いか。そうか」
 に、と笑って、従兄弟はユウリをひょいと抱き上げた。
「じゃあ、乗ろう」
「・・・・・・っ!」
 有無を言わさず係の者に引き渡されたユウリの運命は、幸徳井隆聖だけが知っている。


言い訳
・・・いや、本当に、意味がなくてすみません。隆聖さんも、なんかちょっと明るすぎるし。なんちゃって関西弁だし。すみませんです。失礼しました。まあ、子供達だってことで、多めに見てくださると嬉しいです。
旧家だから、馬の一頭や二頭は持ってるだろうと・・・。うーむ。


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